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わかりやすい介護保険講座3


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    ◆◇わかりやすい介護保険講座3◇◆ 介護保険とシルバー市場
              vol.3 (毎週日曜日配信)
…………………………………………………………………………………………………
第2章 シルバービジネス市場の今後の動向

 〜ポイント〜
  1.シルバービジネス市場の領域は「介護関連ビジネス」のほかに、「元気な
   高齢者向けビジネス」があります。シルバービジネスの大半は元気な高齢
   者が対象です。
  2.「介護関連ビジネス」には、要介護高齢者向けの生活支援的なサービスで、
   介護保険制度の対象外となるサービス(横出しサービス)などを含みます。
   2000年には約9.1兆円、2010年には約14.3兆円にまで拡大する見込みです。
  3.介護保険制度では、民間企業は施設サービスへの参入は認められていませ
   ん。民間企業が営めるサービスは現時点では在宅サービスの一部です。
  4.高齢者の実態は、「大半は健康で、収入は少ないが資産は多く、余暇活動
   や社会活動に積極的で、就業意欲は高い」ことから、「元気な高齢者向け
   ビジネス」は民間企業にとって経営戦略上無視できない存在です。

[1]介護関連ビジネス……………………………………………………………………
 (1)「上乗せ・横出しサービス」を含めた市場規模
   介護関連ビジネスの市場規模は算出方法によって数値が異なります。厚生
   省は、介護保険制度が施行される2000年の介護費用を約4.2兆円と見込み、
   2005年には約5.5兆円、2010年には約6.9兆円規模に拡大するとしています
   (いずれも95年度価格)。ただし、これらの数値は要介護高齢者に対する
   配食サービスや宅配サービスなど生活支援的なサービスで、介護保険制度
   の対象外となるサービス(いわゆる横出しサービス)などを除いたもので
   す。

   ここで言う「介護関連ビジネス」とは、高齢者の介護に係わるマーケット
   全般を指し、要介護高齢者数に1人当たりの介護関連支出を乗じて求めら
   れます。これは、上記の厚生省が示す数値に、いわゆる「上乗せ・横出し
   サービス分」を加えたものと等しいと考えられます。東京都商工指導所
   「福祉ビジネスの事業化戦略」(99年3月)によれば、2000年には約9.1兆
   円となり、厚生省の市場予測の2倍以上に達します。2005年には約11.6兆
   円、2010年には約14.3兆円にまで拡大する見込みです。

   なお、日本経済新聞社が1999年7〜8月にかけて介護関連ビジネスに関わる
   事業者を対象に実施した調査(以下、介護事業調査という)によると、市
   場規模成長率では「通所介護(デイサービス)」や「訪問介護」「訪問看
   護・訪問リハビリテーション」などが大きく伸びる見通しとなっています。
   「通所介護(デイサービス)」は、1999年には440億円であった市場が、
   2005年には4,730億円へと10倍以上に拡大する見通しです。1999年から2005
   年にかけて「訪問介護」は約6.1倍に、「訪問看護・訪問リハビリテーショ
   ン」は約7.5倍に市場規模が拡大するとしています。

 (2)民間企業の事業領域
   わが国の介護サービスは従来、大部分を公共サービスとして市町村、社会
   福祉法人、社会福祉協議会などが供給しており、民間企業の市場参入は制
   限されてきました。

   従来、民間企業が介護関連ビジネス市場に参入する方法は、利用者との個
   別契約か市町村からの業務委託でした。後者の場合、民間企業は市町村か
   ら受託するために大幅な値引きを行い、結果として採算を確保しにくい状
   況となっていました。

   しかしながら、介護保険制度の導入によって、介護サービスは民間企業に
   も広く開放されることになります。介護保険制度がうまく機能すれば、公
   正な競争を通じ、良質な介護サービスを提供する事業者が利用者によって
   選ばれることになります。ただし、介護サービスが本当の意味で「市場化」
   し、民間企業にとってビジネスが成り立つのは在宅介護分野に限定されて
   います。

   介護保険制度では、民間企業に対して、表2-1に示したサービスへの参入
   を認めています。施設サービスについては、政府の行政改革推進本部・規
   制改革委員会、厚生省や経団連などで民間企業による特別養護老人ホーム
   への参入を検討する動きが見られるものの、現時点では民間企業が施設サ
   ービスに直接参入することは認められていません。在宅サービスの中でも
   訪問看護については参入が認められていますが、従来医療保険で給付され
   ていたリハビリテーションについては、参入が認められていません。した
   がって、民間企業が営めるサービスは現時点では在宅サービスの一部とい
   うことになります。

 ――――◆表2-1 民間企業が参入できる介護保険制度対象のサービス◆――――
               【在宅サービス】
      〔サービス名〕           〔民間企業 参入可・不可〕
  訪問介護(ホームヘルプサービス)‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ○
  訪問入浴介護  ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ○
  訪問看護 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ○
  訪問リハビリテーション ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ×
  居宅療養管理指導(医師などによる管理・指導)‥‥‥‥‥‥‥‥ ○(注)
  通所介護(デイサービス)‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ○
  通所リハビリテーション(医療機関でのデイケア)‥‥‥‥‥‥‥ ×
  短期入所生活介護(ショートステイ)‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ○
  短期入所療養介護(ショートステイ)‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ×
  痴呆対応型共同生活介護(痴呆性老人グループホームでの介護)‥ ○
  特定施設入所者生活介護(有料老人ホームなどにおける介護)‥‥ ○
  福祉用具貸与 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ○

               【施設サービス】
  介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ×
  介護老人保健施設(老人保健施設)‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ×
  介護療養型医療施設(療養型病床群など)‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ ×
 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――
  (注)民間企業は薬局による居宅療養管理指導のみ可能
  出所:厚生省資料より作成

 (3)多様な事業主体の参入
  A.大手企業の参入
   従来、介護関連ビジネスは、その供給サービスの特殊性や労働集約型の産
   業構造、採算性の問題などから大手企業の参入は少なく、中小・零細企業
   が多い傾向となっていました。最近になって、高齢者の増加による市場の
   拡大、介護保険制度の施行や様々な規制緩和の進展などから参入を進める
   大手企業が多く見られます。

   1998年7月に住信基礎研究所が実施した全国の上場企業などに対するアン
   ケート調査を見ても、35.6%がシルバービジネスに参入もしくは参入予
   定と回答しています。

   また、前述の介護事業調査によれば、回答を寄せた民間企業のうち、1998
   年度決算が赤字だった民間企業は6割を超えています。しかしながら、介
   護保険制度の導入により市場が拡大することによって、民間企業の5割以
   上は「市場が拡大し、収益は好転・増加する」として、介護関連ビジネス
   の将来には明るい見通しを持っています。

  B.様々な事業主体
   介護保険制度の導入によりシルバービジネスへの参入障壁が低くなるのは、
   民間企業に限ったことではありません。介護保険法と同時に成立した医療
   法改正によって、医療法人はすべての在宅サービスと、特別養護老人ホー
   ムを除く施設サービスを行うことが可能になりました。

   医療機関が行う在宅者に対するサービスとしては、これまで「かかりつけ
   医」の機能を中心に、訪問診療や訪問看護、あるいは訪問・通所によるリ
   ハビリテーションに限定されていました。しかし、これからはホームヘル
   プサービス、訪問入浴サービス、福祉用具販売・貸与、住宅改修に至るま
   での在宅サービスをそろえて事業展開する医療機関が数多く現れるものと
   考えられます。

   ボランティア団体なども法人格(特定非営利活動法人=NPO法人)を取
   得し、指定事業者としての認定を受けることができれば、介護保険制度の
   サービスを提供することができます。

   現行の市町村からの受託事業では、競合相手は同業者のみでしたが、介護
   保険制度下では、社会福祉法人・医療法人・特定非営利活動法人・民間企
   業など多様な事業主体による「市場争奪戦」が繰り広げられることになり
   ます。

 (4)代表的な介護関連ビジネスの概要
   次に、代表的な介護関連ビジネスの概要を見ていきます。(A〜I)は介
   護保険制度の対象となるサービス、(J〜N)は要介護高齢者を対象とす
   る場合であっても、原則として介護保険制度の対象外となる生活支援的な
   サービスです。後者は一部「元気な高齢者」を対象としたもの、あるいは
   高齢者以外も対象となるサービスです。

  A.訪問介護(ホームヘルプサービス)
   ホームヘルプサービスとは、介護が必要な高齢者の世帯にホームヘルパー
   などが訪問し、食事・排泄・衣服着脱・体位変換などの身体介護や、洗濯
   ・清掃・買い物などの家事援助を行うサービスです。介護保険制度の在宅
   サービスの一つであり、家事支援サービスもその中に含まれています。ホ
   ームヘルプサービスは、在宅介護を重視する介護保険制度の要とも言える
   サービスです。

   ホームヘルプサービスの利用状況について、厚生省「健康・福祉関連サー
   ビス需要実態調査(97年)」(以下、厚生省調査という)によれば、サー
   ビスの利用者数は1994年の約23万人から1997年には約38万人にまで拡大し
   ています。1997年の要望者数も約59万人となっています。

   ホームヘルプサービスの市場規模について、中小企業庁小規模企業部サー
   ビス業振興室「在宅福祉サービス市場の現状(98年)」(以下、中小企業
   庁調査という)によれば、2000年の3,110億円(中位推計)から、2010年
   には中位推計で5,940億円、高位推計では8,220億円となっています。家事
   支援サービスは2000年の2,460億円(中位推計)から、2010年には中位推
   計で4,800億円、高位推計では7,420億円となっています(表2-2)。一方、
   2000年の訪問介護市場は民間サービスだけでも1兆円に達するという野村
   証券金融研究所による予測もあります。

  ―――――◆表2-2 在宅介護・在宅生活支援サービスの市場予測◆―――――
                     1995年  2000年 2010年 2010年
                    (現状推計)(中位)(中位)(高位)
  ―――――――――――――――――――――――――――――――――――
  1.家事援助サービス*         |     | 2,460| 4,800| 7,420
  ――――――――――――――――――| 1,948 |―――――――――――
  2.在宅介護・ホームヘルプサービス**|    | 3,110| 5,940| 8,220
  ―――――――――――――――――――――――――――――――――――
  3.在宅(訪問)看護サービス**   |     |    |    |
  4.在宅(訪問)リハビリサービス** |  186 | 1,150| 1,650| 2,290
  ―――――――――――――――――――――――――――――――――――
  5.訪問(出張)入浴サービス**    |   334 | 1,350| 1,920| 2,660
  ―――――――――――――――――――――――――――――――――――
  6.配食、食材宅配サービス       |  37 |  460|  670|  970
  ―――――――――――――――――――――――――――――――――――
  7.クリーニング宅配サービス      |  ― |  23|  34|  50
  ―――――――――――――――――――――――――――――――――――
  8.日用品宅配サービス         |  ― |  41|  59|  88
  ―――――――――――――――――――――――――――――――――――
  9.ハウスクリーニング         |  30 |  99|  140|  210
  ―――――――――――――――――――――――――――――――――――
  10.訪問(出張)理美容サービス    |  ― |  97|  140|  210
  ―――――――――――――――――――――――――――――――――――
  11.福祉用具レンタル         |  76 |  460|  660|  960
  ―――――――――――――――――――――――――――――――――――
  12.移送(外出援助)サービス     |  ― |  30|  44|  66
  ―――――――――――――――――――――――――――――――――――
  13.緊急通報サービス         |     |    |    |
  14.健康相談・情報提供サービス    |  17 |  110|  160|  240
  ―――――――――――――――――――――――――――――――――――
 (再掲)生活支援型小計(7.8.9.10.12)|   30 |  290|  417|  624
  ―――――――――――――――――――――――――――――――――――
       合     計      | 2,628 | 9,390|16,217|23,384
  ―――――――――――――――――――――――――――――――――――
                              (単位:億円)
  (注)デイサービス、ショートステイは含まない。
   *印は「ADL1段階」(=虚弱)向けのみ。
   **印は「ADL2段階」(=寝たきり)向けのみ。無印は両段階共通。
   1995年(現状推計)の1と2には訪問看護ステーション売上以外の「訪問看
   護・リハビリテーション」売上推計値を含む。
   出所:中小企業庁小規模企業部サービス業振興室「在宅福祉サービス市場
      の現状」(98年)

  B.訪問入浴サービス
   訪問入浴サービスとは、介護が必要な高齢者の世帯を訪問し、搬入した浴
   槽や移動入浴車を使用して介助入浴させるサービスであり、介護保険制度
   における在宅サービスの一つです。訪問入浴サービスは、介護保険制度の
   対象となるサービスの中で、民間企業の参入が比較的進んでいます。

   訪問入浴サービスの利用延べ人員について、(株)日本医療企画「10兆円
   介護ビジネスの虚と実(99年)」(以下、日本医療企画という)によれば、
   1995年が約87万人、1996年が約112万人、1997年が約147万人と、年30%程
   度の伸びを示しています。

   訪問入浴サービスの市場規模について、中小企業庁調査によれば、1995年
   時点では334億円でしたが、2000年は中位推計で1,350億円、2010年には中
   位推計で1,920億円、高位推計では2,660億円にまで拡大する見通しです
   (前掲表2-2)。

  C.訪問看護・訪問リハビリテーション
   訪問看護・訪問リハビリテーションとは、在宅の高齢者のもとに、保健婦
   ・看護婦・理学療法士などの資格を持った人が訪問して、看護や看護指導
   を行ったり、リハビリテーションを行うサービスです。介護保険制度の在
   宅サービスに含まれます。

   厚生省調査によれば、訪問看護・訪問リハビリテーションの利用者数は19
   97年には約26万人となっています。1997年の要望者数は約49万人となって
   います。

   訪問看護・訪問リハビリテーションの市場規模について、中小企業庁調査
   によれば、1995年時点では186億円でしたが、2000年は中位推計で1,150億
   円、2010年には中位推計で1,650億円、高位推計では2,290億円にまで拡大
   する見通しです(前掲表2-2)。

  D.通所介護(デイサービス)
   デイサービスとは、在宅の高齢者を社会福祉施設などに通所させ、入浴・
   食事・日常動作訓練・レクリエーションなどを行うサービスであり、介護
   保険制度の在宅サービスの一つです。

   デイサービスの利用状況を見ると、1997年には利用延べ人員が約3,376万
   人となっており、年々増加傾向にあります(日本医療企画)。

   厚生省調査によれば、デイサービスの利用者数は1994年の約39万人から19
   97年には約58万人にまで拡大しています。1997年のデイサービスの要望者
   数も約86万人となっています。 

   デイサービスの市場規模については急成長が見込まれています。前述の介
   護事業調査によれば、1999年には440億円であった市場が、2005年には4,7
   30億円へと10倍以上に拡大する見通しです。

  E.短期入所介護(ショートステイ)
   ショートステイとは、介護が必要な高齢者を社会福祉施設などに数日間宿
   泊させ、入浴・食事・日常動作訓練・レクリエーションなどを行うサービ
   スです。介護保険制度の在宅サービスに位置付けられています。

   ショートステイの利用状況を見ると、利用延べ日数、高齢者1人当たり年
   間利用日数は年々増加しており、1996年には利用延べ日数約711万日、高
   齢者1人当たり年間利用日数は約0.38日となっています。1回当たりの平均
   利用日数は約8.6日です(日本医療企画)。

   厚生省調査によれば、ショートステイの利用者数は1994年の約12万人から
   1997年には約23万人にまで拡大しています。1997年の要望者数も約47万人
   となっています。

   なお、東京都商工指導所「福祉ビジネスの事業化戦略」(99年3月)によ
   れば、ショートステイと前述のデイサービスを合わせた市場規模は1995年
   で約1,450億円にのぼり、今後も拡大する見込みです。

  F.有料老人ホーム
   介護保険制度の下では、有料老人ホームにおける介護を「特定施設入所者
   生活介護」として、在宅サービスの一つに位置付ています。

   ジャパンマーケティングサーベイ「福祉/介護関連市場年鑑97年版」によ
   れば、1996年度における有料老人ホームの市場規模は数量ベースで19,600
   人、金額ベースでは340億円でしたが、1999年度では数量ベースで24,000
   人、金額ベースでは420億円になると予測されています。通産省産業政策
   局サービス産業課「ソフトインダストリーの時代」(96年)によれば、有
   料老人ホームの市場規模は2005年には1,600億円程度に達すると見込まれ
   ています。

  G.グループホーム
   グループホームは軽度、中程度の痴呆症状がある高齢者が5〜9人で共同
   生活をする施設です。グループホームは、台所などがある共有スペースの
   ほか、利用者は個室を持ち、家庭的な雰囲気の中で生活することで、痴呆
   症状の進行を遅らせる効果が期待されています。自宅での介護ではありま
   せんが、介護保険制度では「痴呆対応型共同生活介護」として、痴呆性老
   人向けグループホームにおける介護を在宅サービスの一つに位置付けてい
   ます。

   1999年3月末時点で、国の補助金対象となったグループホームは103ヶ所あ
   り、運営主体は社会福祉法人が多くなっています。補助金対象外で、ボラ
   ンティア団体によって運営されているグループホームなどを含めると、わ
   が国におけるグループホームの数は600〜700ヶ所と言われ、ここ数年増加
   傾向にあります。

   厚生省では、グループホームのサービス量を(表2-3)にあるように見込
   んでいます。2000年度からスタートする新しい介護基盤整備目標である
   「ゴールドプラン21」では、2004年度までにグループホームを全市区町
   村で1ヶ所は整備し、全国で3,200ヶ所に増やす計画です。一方、厚生省が
   2000年2月に示した介護報酬単価によれば、グループホーム利用者1人当た
   りの平均費用は約25万円となっています。

   グループホームの市場規模を端的に示すデータは特にありませんので、こ
   こでは各種統計などを使って市場規模を大まかに算定してみます。グルー
   プホームの年間利用人数(見込み)に介護報酬の平均値(年額)を乗じ、
   さらにグループホームでは家賃や食費などは全額利用者の自己負担となり
   ますので、年間利用人数(見込み)に家賃や食費など(年額)を乗じ、そ
   れぞれの金額を合計します。2000年で約350億円、2004年には約1,032 億
   円規模となります(表2-3)。

  ―――――――――◆表2-3 グループホームの市場推計◆―――――――――
 〔サービス量の見込み〕
  年間サービス利用人数(a)______________________
   〔2000年〕   〔2001年〕  〔2002年〕  〔2003年〕  〔2004年〕
    6,200人 |  9,200人 |  12,300人 |  15,600人 |  18,300人
  ―――――――――――――――――――――――――――――――――――
  グループホーム数___________________________
   〔2000年〕   〔2001年〕  〔2002年〕  〔2003年〕  〔2004年〕
    1,200ケ所|  1,700ケ所|  2,200ケ所|  2,700ケ所|  3,200ケ所
  ―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 〔介護報酬の仮単価〕
  1人当たり平均費用…月額25.2万円(b、計算は25万円とする)
            年額とするので12を乗じる(c)
           ______月額換算______
            要介護1   /   24.3万円
            要介護2   /   24.8万円
            要介護3   /   25.2万円
            要介護4   /   25.7万円
            要介護5   /   26.2万円
            ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 〔家賃・食費など自己負担分〕
  月額22万円とする(d)
  ※ベネッセコーポレーションが運営するグループホーム「くらら鷺沼」を参
   考とした
  上記年間サービス利用人数(a)を乗じる
  年額とするので12を乗じる(e)

 〔市場規模予測〕
  計算方法…(a×b×c)+(a×d×e)
  ―――――――――――――――――――――――――――――――――――
   〔2000年〕    〔2001年〕    〔2002年〕   〔2003年〕   〔2004年〕
   約350億円 |  約519億円 |  約694億円 |  約880億円 | 約1,032億円 
  ―――――――――――――――――――――――――――――――――――
  出所:厚生省・全国老人福祉担当課長及び介護保険担当課長会議資料(1999
     年11月29日)、厚生省・医療保険福祉審議会資料(2000年1月17日)、
     日経BP社「詳報介護保険ビジネスガイド2000」(1999年12月)より
     作成

  H.福祉用具貸与
   在宅の高齢者に対して、福祉用具の貸与を行うサービスもあります。介護
   保険制度では車いす・介護用ベッドなど12種類の福祉用具の貸与を在宅サ
   ービスの一つとして認めています。介護保険制度の下で、訪問介護(ホー
   ムヘルプサービス)と並んで多くの新規参入が予想されているサービスが
   福祉用具貸与です。 

   福祉用具貸与の市場規模について、中小企業庁調査によれば、1995年時点
   では76億円でしたが、2000年は中位推計で460億円、2010年には中位推計で
   660億円、高位推計では960億円にまで拡大する見通しです(前掲表2-2)。

   野村証券金融研究所のように、福祉用具貸与の市場規模は2000年時点で
   2,900億円に達すると推計するところもあります。2000年度における介護
   保険制度の市場規模について、同研究所では厚生省の推計値(4.2兆円)
   を約8,000億円上回る4兆9,800億円と予測しています。このうち、在宅サ
   ービスの市場規模である2兆2,900億円に占める福祉用具貸与のシェアは
   12.6%に相当するとしています。

  I.住宅改修
   介護保険制度では、在宅者に対するサービスの一つに在宅住宅改修費の支
   給を盛り込んでいます。要介護者が居住する住宅をバリアフリー対応に改
   修する場合、要介護高齢者1人当たり20万円を上限に改修費用を給付する
   ものです。主な内容は、〈1〉手すりの取り付け、〈2〉床段差の解消、
   〈3〉浴室床のすべり止めや移動のための床材の変更、〈4〉引き戸への扉
   の取り替え、〈5〉洋式トイレへの取り替え、などです。

   介護保険制度の導入を契機に、在宅介護向けリフォーム市場の拡大が見込
   まれています。介護事業調査によれば、高齢者向け住宅リフォーム市場は
   2000年で約4,000億円に達し、2005年にはその倍の約8,000億円にまで拡大
   する見通しとなっています。

  J.配食サービス
   配食サービスは、介護や支援が必要な高齢者や一人暮らしの高齢者を対象
   として、調理済みの食事を提供するサービスです。

   配食サービスは、要介護高齢者以外の一人暮らしの高齢者なども対象とし
   ているため、介護保険制度の給付対象とはなりませんでした。介護サービ
   スを受けている高齢者ばかりではなく、元気な高齢者や高齢者以外の若年
   層も対象としたサービスです。

   配食サービスの利用延べ人員は年々増加しており、1995年が約454万人、
   1996年が約698万人、1997年が約770万人となっています(日本医療企画)。

   配食サービスの市場規模について、中小企業庁調査によれば、食材宅配サ
   ービス(料理メニューにしたがってそのメニューを満たす食材が宅配され
   るサービス)と合わせた数値として、1995年の37億円から2010年には中位
   推計で670億円、高位推計では970億円へと拡大する見込みです(前掲表
   2-2)。配食サービスに限った市場規模予測として、(株)ヘルシーライ
   フサービスでは、2010年には1,486億6,300万円に達すると推計しています。

  K.宅配サービス
   宅配サービスは、日用品の買い物が困難な共働き世帯や高齢者、身体障害
   者などを支援するビジネスとして伸びてきました。買い物代行サービスと
   も言われ、いわゆる「御用聞き」サービスです。コンビニエンスストアや
   宅配業者などが参入しています。

   宅配サービスは高齢者の在宅生活支援サービスの一環として捉えられてお
   り、将来的に市場の拡大が予想されています。中小企業庁調査によれば、
   2000年の市場規模は中位推計で41億円ですが、2010年には中位推計で59億
   円、高位推計では88億円にまで拡大する見通しです(前掲表2-2)。

  L.ハウスクリーニング
   一般の住居、住宅の屋内を対象に建物全体あるいは一部(バスルームのみ、
   キッチンのみなど)、窓ガラス、換気扇、冷蔵庫、エアコンなどの特定個
   所や特定物の掃除を代行するサービスです。

   中小企業庁調査によれば、2000年のハウスクリーニングの市場規模は中位
   推計で99億円ですが、2010年には中位推計で140億円、高位推計では210億
   円にまで拡大する見通しです(前掲表2-2)。

   中小企業庁調査をはるかに上回る市場規模を示す調査もあります。通産省
   産業政策局サービス産業課「ソフト・インダストリーの時代」(96年)に
   よれば、ハウスクリーニングの市場規模の推計は約200社、300億円(95年)
   であり増加基調にあります。女性の社会進出や高齢化の進展が追い風とな
   り、今後も成長すると予想され、2005年には1,200億円に達するとしてい
   ます。

  M.移送サービス
   移送サービスとは、タクシーやバスに車いすや寝台などを搭乗させるリフ
   トなどを完備した、いわゆる福祉車両によって、高齢者や身体障害者の移
   動手段を提供するサービスのことです。

   移送サービスを民間企業が行う場合、現状では2つの業態があります。一
   つは、高齢者や障害者がデイサービスセンターなどの福祉施設を利用する
   際に、自宅から施設までの送迎を行うサービスです。これは自治体からの
   委託事業であり、現状では大きなシェアを占めています。

   もう一つは、福祉施設送迎以外の個人を対象とした移送サービスで、病院
   への通院や入退院、駅・空港への送迎、旅行の交通手段など、高齢者の外
   出時に利用されるものです。要介護状態でなくても、移動が一人では困難
   な高齢者も対象となります。

   移送サービスの市場規模について、中小企業庁調査によれば、2000年の30
   億円(中位推計)から2010年には中位推計で44億円、高位推計では66億円
   へと拡大する見込みです(前掲表2-2)。

  N.緊急通報サービス
   家庭内で急に気分が悪くなったり、病気になった時に、緊急通報ボタンを
   押せば消防署や民間の受信センターなどに通報が届き、状況に応じて救急
   車などが駆けつけるサービスです。

   緊急通報サービスの実施方法は自治体が消防署と協力して提供する場合と、
   民間企業に業務委託する方法があります。

   緊急通報サービスの市場規模について、中小企業庁調査によれば、健康相
   談・情報提供サービスと合わせた数値として、1995年の17億円から2010年
   には中位推計で160億円、高位推計では240億円に拡大すると予想されてい
   ます(前掲表2-2)。

  O.訪問理美容サービス
   訪問理美容サービスとは、寝たきりや虚弱で理美容室を訪れることができ
   ない高齢者のもとに理美容師が出向いて洗髪、カット、パーマなどを行う
   サービスです。

   理容師法や美容師法では、理容所、美容所以外でのサービスの実施は、原
   則として禁止されています。ただし、疾病その他の理由により、理容所
   (美容所)を訪れることができない場合などについては、特別なケースと
   して認められています。

   高齢者の「心のケア」が叫ばれる現在、厚生省は「環境衛生関係営業の活
   性化のための検討会報告書」(97年)の中で、「福祉理容・美容」は積極
   的に取り組むべきサービスであるという姿勢を打ち出しています。訪問理
   美容サービスは要介護高齢者に限定したサービスではないため、介護保険
   制度の給付対象ではありませんが、今後は美容サービスに対して女性入所
   者の多い施設を中心にニーズが高まるものと見られます。

   訪問理美容サービスの市場規模について、中小企業庁調査によれば、2000
   年の97億円(中位推計)から、2010年には中位推計で140億円、高位推計
   では210億円にまで拡大する見通しです(前掲表2-2)。

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(株)住友生命総合研究所 著
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