…………………………………………………………………………………………………
◆◇わかりやすい介護保険講座2◇◆ 介護保険サービスの仕組み
vol.12 (毎週土曜日配信)
…………………………………………………………………………………………………
補論 自治体による裁量供給
〜ポイント〜
介護保険制度では、市町村が独自に条例で定めることにより介護保険のサ
ービスを充実することができます。これらは、「上乗せサービス」と「横
だしサービス」に大別されます。
……………………………………………………………………………………………
介護保険制度では、要介護度により給付金額の上限が定められており、そ
れを超える費用は自己負担となります。また、給付となるサービスは在宅
では12種類の定められたサービスだけであり、さまざまな状況の下で多様
なニーズのある要介護者にとっては、十分なものであるとは限りません。
介護保険制度では、法律で定めた「介護給付」と「予防給付」のほかに、
要介護状態の軽減・悪化防止と要介護状態になることの予防のために、市
町村が独自に条例で定めたサービスを行なうことができます。これらは、
「上乗せサービス」と「横だしサービス」に大別されます(表6-1)。
(1)上乗せサービス
介護保険の給付対象サービスについて、その上限を超えたサービスを「上
乗せサービス」と言います。「上乗せサービス」は介護保険サービスの
「量」を増やすものと言えます。例えば、より充実した生活を送るために
訪問介護の回数を増やすといったケースです。
本来ならば、これらの費用は利用者の自己負担となりますが、市町村が独
自に条例で定めることにより「市町村特別給付」として給付することがで
きます。在宅福祉サービスの水準を充実させてきた市町村の中には、介護
保険制度の導入によって、これまで受けていたサービス水準が低下するケ
ースも出てくることが考えられます。こうしたケースに対処するために市
町村の独自の給付が必要となったのです。
この例として、市町村の在宅福祉サービスとして週3回訪問介護を受けて
いた人が、要介護認定による介護保険給付として、週2回が適当であると
判定された場合に、これまでとの差が生じる1回分を市町村特別給付によ
る「上乗せサービス」として行うことがあげられます。
また、要介護・要支援ではないものの、一人暮しをしているなどの理由で
市町村から在宅福祉サービスを提供されていた高齢者は、要介護認定で自
立と判定されると介護保険給付の対象となりません。しかし、市町村が市
町村特別給付による「上乗せサービス」を設けることにより、従来と同じ
水準でのサービスを提供することが可能となります。
――――――――――◆表6-1 上乗せ・横だしサービス◆―――――――――
______________
↑ |●上乗せサービス |
| |介護保険の給付サービスの |
| |量を増やす |
| |(例) |
| |・訪問介護を週2回プラス |
| |・訪問入浴を週2回プラス |
サービス| |・通所訪問を週1回プラス |
の量 |  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| ______________ _____________
| |●基本給付 ||●横だしサービス |
| |介護保険の給付対象となる ||介護保険の給付対象となら|
| |もの ||ないサービス |
| |(例) ||(例) |
| |・訪問介護週3回 ||・配食サービス週5回 |
| |・訪問入浴週1回 ||・外出介助週2回 |
| |・通所訪問週1回 ||・緊急通報サービス |
| |・訪問看護週1回 ||・移送サービス |
|  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
――――――――――――――――――――――――――――→
サービスの種類
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
(2)横だしサービス
介護保険制度では在宅で12種類のサービスが定められていますが、これら
に該当しないサービスを「横だしサービス」と言います。「上乗せサービ
ス」が介護保険サービスの「量」を増やすのに対し、「横だしサービス」
は介護保険サービスの「種類」を増やすものと言えます。例えば、一人暮
しで支援が必要な高齢者のための配食サービスや、買物サービス、緊急通
報サービス、移送サービス、などがあげられます。
本来ならば、これらの費用は利用者の自己負担となりますが、市町村が独
自に条例で定めることにより「上乗せサービス」と同様、「市町村特別給
付」として給付することもできます。
また、市町村は「保険福祉事業」として次のような事業を行うことができ
ます(介護保険法第175条)。
〈1〉介護者に対する介護方法の指導などの介護者支援事業
〈2〉要介護者となることを予防する事業
〈3〉指定居宅サービス、指定居宅介護支援、介護保険施設などの事業の直営
〈4〉利用者負担金等の資金の貸付けなど
介護保険サービスの種類と量がほぼ全国一律に決められる中で、市町村特
別給付と保険福祉事業は、市町村の独自性を出すことができるものであり、
要介護者の状況に応じたきめ細かい介護サービスを提供することが可能と
なります。
(3)「上乗せ・横だしサービス」の課題
「上乗せ・横だしサービス」により市町村がその特徴を出してサービスの
充実を図るための財源は、その市町村の第1号被保険者の保険料です。
このため、「上乗せ・横だしサービス」を充実するほど保険料が上昇する
ことになります。
例えば、愛知県高浜市では1999年9月に第1号被保険者の保険料を推計した
ところ、全国平均より583円高くなりました。このうち319円が痴呆の要介
護者に対する訪問介護回数の増加や、国の基準より軽度の要介護者への訪
問入浴の実施といった「上乗せサービス」分、34円が自立した高齢者に対
する住宅改修費の給付などの「横だしサービス」分となっています。
「上乗せ・横だしサービス」は、市町村による介護保険のサービス内容に
独自性を与えるものとなります。しかし、市町村が独自に選択する「上乗
せ・横だしサービス」を充実させると、周辺の市町村に比べ介護保険料が
高額となることから、ニーズと負担のあり方について地域住民の理解が不
可欠と言えます。
…………………………………………………………………………………………………
(株)住友生命総合研究所 著
『わかりやすい介護保険講座 テキスト2』(地域金融研究所)
▲ △ ▲ △ ▲ △ ▲ △ ▲ △ ▲ △ ▲ △ ▲ △ ▲ △ ▲
「わかりやすい介護保険講座」のテストがWebでできます。
この講座から問題が出題されますのでよく理解してください。テストが終わったら
すぐ採点でき、あなたの順位が表示されるWebならではの楽しみがあります。
ぜひ、チャレンジしてください。
<ホームページ>http://cam.sumitomolife.co.jp/kaigotest/
▼ ▽ ▼ ▽ ▼ ▽ ▼ ▽ ▼ ▽ ▼ ▽ ▼ ▽ ▼ ▽ ▼ ▽ ▼
|